4 道を切り拓いた手紙

…中村 岳嗣

強力な営業ツールは「手紙」だった

じつは最初の1年間、法人営業の成果は良くありませんでした。

最初は東京の不動産会社を営業でまわっていました。あるとき、仕事で知り合った不動産投資会社の役員の方が、「中村さん、これは地方のほうが手応えあるんじゃないですか?」とアドバイスしてくださったんです。

地方? 出張するだけで時間とコストがかかる……と敬遠していたのですが、一理あるかもしれないと思い、まず、自分の地元である京都と大阪の大手不動産会社7社をリストアップし、各会社のいちばん偉い人に宛てて手紙を書いたんです。

手紙にしたのは理由があります。僕よりちょっと年上の、会社を経営されている方とご飯を一緒に食べに行ったんです。次の日、その方から早々に直筆の礼状が届きました。「ありがとうございました、おかげで楽しい時間が過ごせました」と、丁寧な文面で。字も美しくて、すごく心に響いたんですね。この経験にヒントを得て、僕も手紙を送ろうと思いついたのです。

それまで使ったことのなかった万年筆を、文房具の伊東屋さんに買いに行きました。和紙の便箋も買って、自分なりに丁寧に……「京都でのろしをあげたいんです!」みたいな内容を書きしたためました。

手紙を送って二日後の昼。電話がかかってきました。京都の不動産会社さんから、すぐに会いたいと。驚いたことに、1週間のうちに、7社送ったうち6社から返事がきて、契約に結びついたんです。そこからどんどんご紹介いただき、京都、大阪、名古屋……と広がっていきました。

僕が手紙を送ったのは、みんな70代ぐらいの方たち。僕のような下の世代からこういった手紙が届いたことで、「なんだかイキのいい奴がきたな」と興味を持って受け止めてくださったのかもしれません。

ともあれ、一筆に思いを込めた手紙という生身のツールが、僕たちの会社の行き先を切り拓いてくれたのです。

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