2 資本金1億円のワケ

…中村岳嗣

1億円の元手で何ができるか

投資の仕事では、常に「変化」に注目します。世界経済の変化、経営陣や社員の変化、商品やサービスの変化、消費者の変化……。これからの日本にとって最大の問題はまぎれもなく人口減・世帯数減で、不動産分野がこの先ものすごい変化を経験することは疑いようがありません。

ちょうど2014年10月のこと。中高時代の同級生だった林とお茶をしに行ったんです。僕は当時、香港に住んでいて、たまたま出張で帰国中。林は新橋のオフィスで働いていました。

新橋のファミレスで、「最近面白いアプリは……」とか「何か一緒にビジネスできるんじゃない?」なんて雑談を、ポテトを食べながら二人でしていたとき。ふと林が、「じぶんで仲介できる住まいのサービスは?」と、じぶん仲介サービスの源となるアイデアをこぼしたんです。

「住まい」をテーマに、ローカルなコミュニケーションに価値観を置くサービス!とても面白いアイデアだと直感しました。

もちろんそんなサービスをしている会社はありません。僕は不動産については素人ですが、それまでに13回引っ越しの経験があり、“すまい探し”については相当詳しいという自信があります。自分たちで必死にやれば実現できるかも、と思いました。

僕のやっていた上場株の投資では、ヒット率は6~7割。ある会社に投資するとき、どんなに調べてもわからないことはたくさんあり、確率勝負です。そんな世界にいた自分が、この「じぶん仲介」のアイデアに不思議な魅力を感じたのです。

元手も、スタートアップにしては珍しい1億円を自分たちで出しました。ベンチャーは9割方つぶれるのですが全然迷いはなく、一番自信が持てるアイデアなんだから自分たちのお金でやるのが一番いい、と。1000万円とか2000万円とかではなく、長く成長する会社にするためにも必要な体力だ、との決意も込めました。

じつは、林と僕は25歳の頃、一緒に働いていたんです。当時僕が勤務していた証券会社のものすごく偉い人の付き人のような仕事で、朝の3時にアフリカから電話がかかってきてすぐ出勤しなきゃいけないこともザラでした。いわば同じ釜の飯を食った間柄です。業界リサーチやビジネスプラン作りを進め、2015年3月、ここ富ヶ谷にオフィスを構えました。

2017年5月、準備期間を終えたスタイリィにジャフコさんの出資が決定。これまで以上にペースアップして、僕たちはこの先も長く続く坂道を登り始めました。

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